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各種苗の放流場所 
 稚魚・稚貝が本来生息している場所に放流することで、より大きな放流効果が期待できます。
 種苗ごとの放流方法についても、随時情報を書き加えていきます。


 ◇アワビ(トコブシ)の放流について◇                                 2022年6月28日更新

 <放流の時期>
  
 これまでアワビの放流は秋~春に行ってきましたが、近年、夏期に生殖巣が発達する親貝が出てきたため、早期採卵を実施しています。早期に採卵すると、冬になって水温が下がる前にある程度の大きさまで成長するため、低温期に死なずにより多くの稚貝が生き残ります。

 早期採卵して飼育した貝は、成長の良いもので翌年の春には放流サイズに達するため、放流時期も早くにスタートできます。

 アワビの餌となる海藻は、夏の高温期に多くが枯れて消失するため、その前に放流できれば生残率も上がることが期待できます。
 一方で、海藻の供給量に焦点を当てれば、春先の海藻が繁茂する時期に放流した方が良いのかとも思いますが、春は稚貝の外敵も多い時期です。

 実際の放流時期については、各漁協で判断されると良いと思います。
 
    <放流する場所>
  
 アワビの稚貝をどこに放流するか、
これが生残率に大きく関わってくると考えています。
 
 親貝となる大きなアワビが生息している場所がいいのか、というと決してそうではありません。
 小さなアワビは大きなアワビが食べているような海藻はまだ硬くて食べにくい、と考えられています。よって、カジメなどの大型海藻よりも、小さくて柔らかい天草(マクサ等)
が生えている場所の方が適しています。

 左の写真のような潮下帯(大潮の干潮時でも水から出ないような場所)で、食べられる小さな海藻が生えている場所に放流すると良いでしょう。

 実際には漁業者が放流することが多いので、放流時点での海の様子から判断するのが良いと思います。
    <稚貝のまきかた>
  
 実際に稚貝を放すとき、瓦や大きな貝殻などに付着させた状態で海中にまくと、うねりや波で付着物ごと移動してしまったり、浅い場所だと打ちあがってしまいます。
 そしてアワビは夜行性のため、日中はほとんど動きません。海中に放たれたからといって、すぐに隠れ場所を探して移動するかというと、そうでもないのです。何かに付着した状態だとその方が安全と思ってじっとしています。そうして付着物ごと海底をゴロゴロ移動していると、外敵に見つかりやすく、食べられてしまいます。

 そのため、何にも付着させずに、稚貝をそのまま磯場に置くか、岩の隙間に入れ込むように撒くと、付着していないと安定しないアワビはすぐ移動を始めるため、外敵からも隠れやすく、夜になって餌を探しに行くのもスムーズです。

(左の写真は放流されてすぐの稚貝)
 
<放流貝のその後>
 
 このように様々なことに配慮して、大切に放流したアワビ稚貝たち。
 外敵の多い海中で、どのように生き残っていくのでしょうか。

 アワビは採卵から放流サイズに成長するまで1年かかります。
 それを漁業者たちがお金を出して購入し、放流するのです。
 1年間かけて育てられ、将来の漁獲を期待して購入されたアワビたちが、放流してすぐ死んでしまっては意味がありません。

 少しでも放流効果が上がるように、放流された稚貝のその後を追跡調査し、その結果を現場にフィードバックすることで地元漁業の活性化に繋がればと思います。
 
 (写真提供:葉山町漁業協同組合)

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